《貸し物屋》さんの物語
MISSION00:秘宝・《双牙》を回収せよ
MISSION01:己が力を自覚せよ
MISSION02:活火山鎮静作戦
第二話:色あせた町
第三話:炎の鳴き声
第四話:我焦がれ
第五話:EXTINGUISH
第六話:ザワメキ
第七話:結果報告・活火山鎮静作戦
MISSION03:優しい銀髪
第一話:四戒
第二話:ルメ
第三話:絶望の町
第四話:悪魔
第五話:ヤサシサ
第六話:仮面と銀髪
5月22日、MISSION02第七話更新。
一話が章に分かれている場合、同時進行で物事が進んでいる事を表します。
於:エルヴンの古城
報告者:マリィ・ホーネット
私はマリィ・ホーネット。
表沙汰には出来ない依頼などを引き受け、
今回はいないけど、相棒と共にそれを遂行する事を主な仕事にしてる。
要は「裏の何でも屋」といった感じ。
と言っても、専ら盗み専門だけど。
今回依頼されたのは
すんごい昔はちゃんとしたお城で、
十年ぐらい前までは美術館だった、エルヴンの古城に安置されていると言う
秘宝・《双牙》の回収。
《双牙》はエルヴン城がまだキチンと王城として使われていた頃の王家の秘宝で、
「時をも切り裂く」とか言われた剣。
お城が美術館になった時にそのまま美術館内で最も貴重な品として飾られていたみたい。
話によれば、美術館が閉鎖される際にこれも持ち出すつもりだったらしいけど、
城から持ち出そうとすると色んな怪奇現象が起こるんだって。
なんでも、
証明が全て消えた、とか
運び出す途中の絵画・美術品などが空を舞った、とかいうことだけど・・・
何かの呪いだって当時の職員は考えて、
そのままそこに厳重にロックをかけて放置したんだって。
《双牙》を手に入れれば時をも操る力が得られる!!
って感じで今じゃ都市伝説みたいになってて、
時々盗掘者が古城に入るみたいだけど、その呪いとやらで盗めずに逃げ帰ってくる
って話はそういえば最近よく耳にする気が・・・
でも、どうもありがちな話で胡散臭いんだよねぇ・・・
正式な依頼が無かったら正直盗りに来ようなんて考えなかったかも。
でもでも依頼を断るわけにもいかないのが悲しいトコ。
なんでって、これでご飯食べてるからに決まってるでしょ?
0:00AM 城門前
で、今私はその古城の正門前にいる。
ん〜と・・・あー、やっぱ鍵掛かってるかぁ
門の鍵なんて持ってないけど、
門自体がこんなにボロいんじゃ鍵がなくたって問題ない。
ちょっと蹴っ飛ばしてやれば・・・
ガギッ!!!
・・・ギィィィィィィィィ・・・
ほらね。
ていうか・・・あれ?
今まで盗みに掛かった奴もここから入ったんじゃないのかな・・・?
なんで鍵掛かってたんだろ?
・・・城壁よじ登って入ったのかな?
だとしたら大変そうだなぁ・・・。
パッと見3,4メートルはありそう。
さてと、
ではマリィ・ホーネット、只今より《双牙》回収作戦を開始します!
第二話一章:微かな光
於:???
報告者:???
・・・・・・・・・・・・・暗い。
今何時だ・・・・・・・?
というか、今何年の何月何日だ・・・・・・・?
いつからここにいたんだっけ?
何でここにいたんだっけ?
・・・・・・・・・?
あれは・・・・・・・
前にも見たような・・・・・・・・・・・
でもすぐに消えてしまうんだろ?
確か、前見たときもそうだった。
その“前”ってのがいつか思い出せないけど。
・・・・・・・・・・・・・・
でもなんだろう・・・・・?
今度は以前とは違う気がする・・・・・・
なんだか以前よりずっと強い光だ・・・・・
あれはどこから来ているんだろう・・・・
何でこんな場所にきてるんだろう・・・
・・そうだ、あの光の元に行ってみよう。
そしたら何かが変わる気がする。
そしたら何かが思い出せる気がする。
待ってて、今行くから。
消えないでいてくれ。
今、行くから。
於:エルヴンの古城
報告者:マリィ・ホーネット
0:10AM エルヴンの古城・廊下
・・・なかなか悲惨な事になってるわね・・・
城内はおびただしい数の血痕。
ただ盗掘に入ったってだけでここまではならないわよねぇ・・・。
でも遺体や遺品は1つも残っていないみたい・・・?
う〜ん・・・
この依頼、想像以上に大変になりそうかも。
その方が面白いけどね。
0:15AM エルヴンの古城・美術品展示室
・・・あれだね、目標の秘宝・《双牙》。
ホントに置きっぱなしなんだぁ・・・
《双牙》の刃は湾曲していて、刃同士が向き合っている。
そんな形の剣(?)が一対、ゴムのような何かで繋がっている。
・・・これが「時をも切り裂く」って言われたヤツなの・・・?
こんな形じゃ何にも切れそうにないじゃない・・・。
まぁいいわ、ロックを解除してさっさと頂いて、さっさと帰ろっと。
“厳重に”とは言ってたけど、十年も前の技術じゃ高が知れてるってものだわ。
・・・んーと、
あは♪簡単簡単!
こんな単純なロックでよく十年間守り通せたわね〜。
ここで私愛用品、自作のPCの登場!
あらゆる電子ロック解除のプログラムを仕込んである逸品。
今じゃ電子ロックが主流だから、これで大抵の鍵は開けられるってわけ。
泥棒稼業やってて鍵も開けられないんじゃ話しにならないしね。
さて、と・・・
『プログラムを起動します』
『ロックの情報を解析中・・・』
『解析完了、ロックの解除に移行します』
『ロックを解除中・・・・・・・40%・・・・・65%・・・・・・89%・・・・』
私のPCから無機質な電子音声が響く。
『・・・100%、ロックを解除しました。プログラムを終了します』
カチッという鍵の開く小さな音と共にまた電子音声が響く。
ふんふんふ〜ん♪余裕余裕、大余裕!ってね。
呪いってヤツもただのデマだったみたいだね〜。
何に怯えて逃げ出したんだか・・・。
根性無いよね〜。
そして、《双牙》を覆っていた強化ガラスのカバーを外そうと手をかけたその時。
ガシャァァァァァァァァァァァァン!!
すぐに振り返ると、そこには何もいない。
窓ガラスだけが割れて、ボロボロのカーテンだけがたなびいている。
・・・・いや、いる。
何かの気配がする。それもかなりたくさん。
《双牙》はしばらく放って置いて、これまた愛用の銃を構える。
ドンッ!!
・・・っ!?
何かに突き飛ばされて、私は地面に転がった。
・・・・・・・・・!!??
・・・やっぱり何かいる。
でも姿が見えないなんて・・・。
「そウ・・・が・・・・・・・渡・・・サン」
「去れ・・・・サレ・・・・」
・・・まずいね・・・
声の数からすると、ざっと4,50匹はいるかも・・・。
私は静かに後退して様子をうかがった。
次の攻撃に備えなきゃ・・・
ドンッ!!
私は壁に叩きつけられた。
うっ、ぐ・・・・・・・っ!?
ヤバイ・・・!!
やっぱり姿が見えない上に大勢の相手に立ち向かうのは無謀だったかも・・・
「去ラ・・ぬ・・なら・・・・・・殺・・・スッ!!!」
首に手らしき感触が伝わり、絞められる・・・
・・・・・・・・・っ!!
意識が遠のきそうになったその時、
「うぉわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
・・・天井裏も無い部屋の中なのに、男が降ってきた。
於:エルヴンの古城・美術品展示室
報告者:マリィ・ホーネット
・・・ドサッ!!!
その男は勢いよく地面に落っこちた。
でもそれに驚いたのか、私の首を絞めていた“何か”は離れたみたいだ。
「ゲホッ、ゲホッ!!・・・・・・なんなのよ、もう!!」
意味が分からない。
見えない“何か”に襲われたり、いきなり男は降ってくるし・・・。
「痛っててててて・・・・・・ん?なんだここ?今何時だ?てか今何年何月何日だ?」
・・・正気とは思えない。
こんな辺鄙な所にいきなり現れて、自分の周りの状況が全く分かっていないなんて。
「・・・ん?てかお前誰だ?」
そいつは私を見てそういった。
「あんたみたいな不審極まりない男に名前言うと思ってんの?馬鹿じゃないの?」
ハッキリ言って、頭の中がぐちゃぐちゃで訳が分からない。
目の前には上も下もダブダブの服を着た男・・・というより少年。
誰だ?なんて私が聞きたいっての。
「お前っ・・!失礼な奴だな!初対面でそりゃねぇだろ!!」
少年は頭にきているようだ。
「あんたみたいな怪しい奴にたいして失礼も何も無いでしょうが!」
・・・でも頭にきているといえば私だってそうだ。
何でか分からないけど、怒らないと気がすまなかった。
「お前っ・・・初対面なのにホント、キッツイ奴だな・・・」
今度は落ち込んだ様子で向こうを向いた、
その時、
「うおっ!?何でこいつらがこんな所にいるんだ!!?」
・・・・・・・!?
どういうこと?こいつにはあの“何か”が見えてるって事?
すると少年は辺りを見回し始めた。
そして双牙の方を見た途端、
「おおおおおおおおおおおっ!!!!」
「双牙ぁぁぁぁぁ!!!!」
と叫んだ。
・・・もっと訳が分からなくなってきた。
なんでこいつ《双牙》のこと知ってんのよ。
しかも、いかにも『旧友との再会』っぽい感じで言ってるし。
私は思い切って、今私の中にある一番の疑問をぶつけてみる事にした。
「あんた・・・・・・一体何者?」
少年はクルリとこちらを振り返り、ニコッと微笑んでこう言った。
於:エルヴンの古城・美術品展示室
報告者:マリィ・ホーネット
「・・・《貸し物屋》ぁ・・・!?」
・・・胡散臭いにも程があるっての。
そんな職業聞いたことないし。
「そう、《貸し物屋》」
「困ってる人に力を貸してあげるのが仕事。」
少年は続けて言った。
「・・・よく分かんないわよ。」
「えーっ・・・。これ以上の説明無いと思ったんだけど・・・なッ!!!」
少年は素早く《双牙》を展示してあった台座から拾い上げ、“何も無い”空間に片方の刃を投げつける。
「グァァ・・・・ゥゥゥゥゥ・・・・」
「そ・・・ウが・・・ユル・・・さ・・・」
・・・・・!?
攻撃、した・・・?
少年が二つの刃についているゴムのようなものを引っ張ると、
《双牙》は再び彼の手に戻った。
「わりぃけど、今はこれ以上の説明はできそうになさそうだ」
「な、何で・・・?」
「何でも何も、こいつら倒さなきゃならねぇし・・・」
「ちょっと待って!“こいつら”って、やっぱりここに何かいるの?」
「・・・あぁ、そうか。フツーのやつにゃ見えねぇんだっけ。」
「・・・そうだな・・・よし、そうしよう。」
「な、何よ・・・?」
少年が空に指で四角を描くと、その描いたところから薄い紙のようなものが現れた。
それを私に手渡すと、
「そんなに気になるなら、これに署名しろ。そしたら見えるはずだ。」
「あ、ペンは気にするな?指で書きゃちゃんと書けるからさ。」
その紙を見ると、
可視契約
我、時の狭間に葬られし者から目を逸らさず、
其に立ち向かう事を此処に誓わん。
・・・と書いてある。
下に小さく署名欄もある。
「どうする?別に知りたくなきゃ書かなくてもいいんだぞ?」
・・・どうしようか。
これに名前を書いたら何か大きなものから逃れられなくなる気がした。
・・・でも、何も知らないままこの場を去ったらきっと大きな後悔をするはずだ。
知りたくなったものは何が何でも知る
それが私の信条だから。
「・・・よし、書こうじゃないのよ。何が出たってビビんないんだから!」
指で書名欄に名前を書き込む。
・・・Marie・Hornet。
そして目を上げると、
「何なの!?こいつら!!!」
そこには人に似た形ではあるけど、明らかに人ではないものがいた。
頭がない奴、腕がない奴、片足、両足がない奴・・・
共通して言えるのは、
皆、体は真っ黒で体の一部に妙な紋様が浮かんでいるということだけだ。
「なにをどうやったらこんな・・・っ」
私の声は震えていた。
「んだよ、ビビッてんじゃん。」
少年は続ける。
「こいつらを俺は《食われた者》・イートゥンと呼んでいる。」
「お前にこいつらは倒せない。ここは俺に任せなよ。」
「・・・・・・・・・・・」
私は恐怖で声が出なくなっていた。
何で?どうして?
そんな疑問で頭が一杯だった。
「・・・おい!?・・・聞いてるか?」
「・・・へっ!?」
「大丈夫かよ、ホント。」
「いいか、よーく聞けよ。」
「お前、今から3秒間宙に浮いてろ。」
於:???
報告者:銀色の髪の青年
・・・・・・遅い。
作戦開始から30分経つ。
あの馬鹿は一体何やっているんだ。
目標到達まで10分、目標回収までに3分、脱出に6分の段取りの筈だろうが。
それがオーバー11分とはな。
待ってる身にもなってみろ。
貴重な睡眠時間を随分削られちまったじゃねぇか。
ふぁぁ〜〜〜・・・、眠い。
本当にいつまでタラタラやってるつもりなんだ。
アイツはアレか?
どこかのほのぼの家族の一番ちっさいガキか?
・・・我ながら下らんな。
・・・ピピピピピピピピピピ!!!
・・・何だ?
報告します。
マリィ・ホーネットが現在潜入中の地点に多量のキルレアン反応を確認。
繰り返します。
マリィ・ホーネットが現在潜入中の地点に多量のキルレアン反応を確認。
・・・ほぅ。
・・・何故反応が出たかは分からんが、あっちは随分面白そうな事やってるみたいだな?
・・・どうせ俺も暇してた所だ。行ってみるか。
空間転移プログラムを起動します。
転移先の座標を入力してください。
アイツが潜入している地点は・・・っと
・・・・・・・よし。
座標の入力を確認、転移を開始します。
転移装置から離れないで下さい。
円形の台座に乗る。
途端、鈍く青白い光が俺を包む。
於:エルヴンの古城・美術品展示室
報告者:マリィ・ホーネット
・・・こいつ、何回ワケ分かんない発言すれば気が済むわけ?
いきなり“宙に浮いてろ”だなんて・・・
「どうした?早くしろ。」
「早くしねぇと、お前まで巻き込まれるぞ。」
・・・あぁ、もう!
やればいいんでしょ、やれば!!
どうせ、宙に浮いとくこともできない事じゃないんだし。
「ワイヤーガン、起動」
「了解、ワイヤーガンを起動します。」
・・・私の銃は複数の機能が使用できるようにしてある。
そして私の声紋を認識してその機能に変換する仕組みだ。
「うおっ!!スッゲェな、それ!!」
少年は驚きつつも、《双牙》をまたイートゥンに向かって投げつけている。
・・・天井に向けて発砲。
ガチン!とフックが天井に突き刺さる音が聞こえた。
「準備できたわよ。」
「・・・ん、そうか。じゃ、上がるときは合図してくれ」
「はいはい、じゃあいくわよ」
「おう」
「あ、そうだ」
「??」
「・・・・覗かないでよ?」
声のトーンを落として言い放つ。
「・・・・・・・・???意味わかんねぇ。」
彼はもう一発《双牙》を放ちながら言った。
「あ、そう・・・」
なんかフツーにスルーされて妙な感じだ。
「はい、今度こそ本番!」
「いち、にぃの・・・」
「さん!!」
私はワイヤーガンの巻取りを開始。
高速で天井に向かって上昇していく。
「ん、じゃあ本気で行こうか、《双牙》!!」
少年は胸の前で二つの刃を交差させ、素早く腕を開いた。
・・・驚いた。
湾曲していた《双牙》の刃がまっすぐになっている。
よく見ると、ゴムのような部分も大分伸びていて、ほとんどが地面に付いている。
「いっくぜぇぇぇぇ!!」
少年は体を右にひねらせ、すぐに逆に回転した。
・・・伸びたゴムのようなもので繋がれた二つの刃が大きな円を描き、
一回転でイートゥンとやらをほとんど引き裂いた。
「がァァ・・・・あアアア!!!!」
「うぅグゥゥ・・・ゥゥ・・・!!!」
悲鳴にも似た怨嗟の声が部屋中に響いた。
「《双牙》・旋回刃、デュアル・サークル、ってな。」
「へっ、雑魚が。《双牙》と俺をナメんなよ?」
「おい、お前!もう降りてきていいぞ。」
私は言葉に従う事にした。
私が降りてくると、
「・・・あとはまぁ、テキトーにチャチャッとやるからさ、そこで見てな。」
と言うと少年は駆け出した。
今までに見たことないような変わった身のこなしでイートゥンを引き裂いていく。
「・・・ふぅ。」
と少年が息をついたその時、
部屋の隅から一匹の腹に穴の開いたイートゥンが少年に飛び掛ってきた!
「あぶない!!」
私は反射的に銃を抜き、そいつの頭を撃ち抜いた。
「グゲゥ・・・ッ」
と小さい呻き声を上げて、そいつは消え去った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
少年は黙っている。
「・・・・・・・なんでだ。」
「・・・え?」
「なんでお前が“やつら”を倒せる!?」
・・・少年の顔には怒りにも似たような表情が浮かんでいた。
報告者:銀色の髪の青年
於:エルヴンの古城・廊下
「ううぅぅ・・・・・・あぁああ」
「ぬぅぅ・・・・ユル・・さん」
・・・・・・??
こんな辺鄙なトコに人、か・・・?
こいつぁいい暇つぶしになりそうな予感がするな
エルヴンの古城・美術品展示室前
「何故お前が“やつら”を倒せる!?」
・・・お?
こりゃあいつの声じゃねぇな。
誰かいるのか・・・?
ちょっと様子見てみるか。
報告者:マリィ・ホーネット
於:エルヴンの古城・美術品展示室
・・・私があいつら倒しちゃいけないワケ・・・?
ホントに意味分からない奴ね・・・
銃で頭ぶち抜いたんだからくたばるに決まってんじゃない。
「・・・・・・お前もか」
「・・・は?」
・・・「お前も」?
「お前も俺から“力”を盗んでいった奴らの一人なのかって言ってんだよ!!」
・・・いきなりなんなのよ。
「意味分からない事言わないでよ!」
「あんたなんか今まで見たこともないし、それに“力を盗んだ”ってなんなの・・・って、わっ!!!」
言い終わらないうちに少年は《双牙》で切りかかってきた
「ちょっと!!!危ないでしょ!?」
「うるせぇ!てめぇにかけるような情けはねぇんだよ!!!」
・・・なんなのよ、この豹変っぷり・・・
・・・ていうか・・・
「・・・あーっ!!!」
ここで私は重要な事を思い出した
「そういえば!それ今回回収を依頼されてるんだから、大人しく渡しなさいよ!」
「てめぇ!!!“力”だけじゃなくて《双牙》まで奪うつもりか!?」
「もう許さねぇ・・・てめぇのような奴はここで裁いてやる!!」
・・・あくまで渡さないってわけ?いい度胸じゃない。
私の銃の腕だってかなりのものなんだから。
「あ、そう、じゃあ仕方が無いわね。後悔しても知らないわよ?」
「てめぇ・・・誰に向かって口きいてやがる・・・」
「いくぞっ・・・!!」
と私たちが同時に言い、駆け出したその時、
キンッ!!!
何かが飛んできて二人は同時に飛びのいた。
・・・・・・・・剣?
床に剣が刺さっている。
「これは・・・」
東洋で使われていると言う若干反った刃
柄に付けられた鈴・・・
間違いない
私は扉のほうを見る。
「おーおー・・・」
「マリィ、お前随分遅いと思ったら何だ?随分面白そうな事やってるみたいだな?」
銀色の髪、血のように赤いロングコート、
その男の名前はリィ・ベトライ
於:エルヴンの古城・美術品展示室
報告者:リィ・ベトライ
さて・・・?
勢いで刀投げてしまったが、これはどういう状況だ?
ダブダブの服装の・・・外見からして16,7ぐらいの小僧か・・・
一体何処から湧いて出てきた?
「リィ!!なんであんたがここに来てんのよ!!」
・・・考えてる途中に相変わらず五月蝿い女だ
「お前があまりにも遅いからに決まってるだろうが、アホか」
「ア、 アホとは何よ!」
「こっちだって何がどうなってんだか分かんないんだから!」
「だったら何でこっちに報告しない?」
「う・・・それは・・・」
「で、だ」
俺はさっきの怒り顔から打って変わってキョトン顔になってる奴のほうを向く
「お前、一体何者だ?」
「ここはだいぶ人里から離れた荒地の真ん中の古城だ。
そんな所に一体何のようだ?見た感じ、盗掘者ってわけでもなさそうだしな」
「俺は・・・」
「分からないんだ」
「は?」
マリィと声がかぶった
「何で俺がここにいるのか、今が一体いつなのか、俺は一体何者なのか、
なんでこの女が“やつら”を倒せるのか・・・全部だ」
・・・これは本当にワケが分からないな
「まぁ、そう言う事情だという事はわかった」
「だがこっちにも生活があるからな、それ、渡してくれないか?」
「そんなことできるわけあるか!!」
「・・・??何故そこまでそいつにこだわる?」
「・・・分からない。」
「ただ、俺は盗られた“力”を取り戻さなくちゃいけない・・・それだけはハッキリと分かる」
「細かい事は俺には関係ないことだ」
「要は、それを渡す気は無いんだな?」
「そうだ。これを渡す気なんてさらさら無いぞ。」
「そうか・・・なら!」
俺は素早く少年の後ろに走りこむ
スピードはかなりのものだと自負している
「・・・!!」
少年が振り向くか向かないか、微妙な所で・・・
・・・ドッ
「っ・・・」
首筋に手刀を叩き込む
そして倒れこむ少年を受け止める
「ちょっ・・・リィ!?」
「回収目標を所持している者が引渡しを拒否するなら、そいつごと連行するまでだ」
「・・・あ、そうですか・・・」
「行くぞ」
・・・0:40AM 目標回収完了。
MISSION:01
己が力を自覚せよ
於:リィのアジト
報告者:GAZER(第三者)
・・・アジト内部。
「ねぇ、リィ〜〜・・・いつまで見張ってればいいわけ〜〜?」
右半面に仮面を被った少女が銀髪の青年に気だるそうに尋ねる。
「うるせぇな・・・いいから黙って見てろ」
椅子に縛り付けてある少年・・・《貸し物屋》の少年を捕らえてここに運んでから
かれこれ3時間は経過している。
その間ずっと見張っているわけだからウンザリするのも当然だ。
「しかし、見れば見るほど訳の分からん奴だな・・・」
ダブダブの服、金髪に赤毛の混じった髪、そしてその手に固く握られる《双牙》・・・。
ハッキリ言って不審である。
「ファ〜〜〜〜・・・ねむーーい」
と少女があくびをついたその時、
「ん・・・?今何時だ?てか今何年何月何日だ??」
少年が目を覚ました。
「うわ・・・言う事全く一緒なのね・・・」
「ようやく目ぇ覚めたか、三年寝太郎が。」
「サン・・・?・・・・はぁ?」
「気にするな。」
「さて、目覚めて早々だが、色々と聞きたいことがある。」
「・・・・・・・」
少年は黙っている。
「嘘偽り無く質問に答えろ。でないと・・・」
青年は右腕にくくりつけた鞘から刀を抜いた。
「痛い目見るからな?」
「・・・・・・・ッ」
若干、少年の顔が青ざめた。
「・・・返答なきは承認とみなす。では、始める。」
「名前は?」
「・・・わからない」
「・・・どこから来た?」
「・・・わからない」
「・・・・どうやってあんな場所に来た?」
「・・・わからない」
「・・・・・何が目的だ?」
「・・・わからない・・・けど、《力》を取り戻さなきゃいけない・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・ハァ・・・全く質問が意味をなしていないな・・・」
「あ、そうだ、あんたが言うその《力》って何なのよ?」
マリィが口を挟む。
「・・・・・・具体的には言いづらいな・・・」
「そういや、お前はその《力》を貸し出してるんだよな?」
「そうだけど・・・今はほとんど盗まれて貸し出せるのは1つしかない・・・」
「だが、貸し出せるんだよな?」
少し語調を強めて言い寄る。
「そうだけど・・・?」
少年は少したじろぐ。
「なら決まりだ、その《力》俺に貸せ」
「ちょっ・・・リィ!?」
「・・・いいのか?あんた」
「自分から言い出した事だ、何の文句がある?」
全く得体の知れないものにすすんで手を伸ばすのは当然危険な行為。
だが、この銀髪の男はそれを望んだのだった。
於:リィのアジト
報告者:ダブダブの服の少年
「《力》を貸してもらおう」
「もともとお前は訳が分からないんだ、まぁ『虎穴に入らずんば虎児を得ず』といった感じだな」
なかなか見所があるっていうか、向こう見ずっていうか・・・。
俺の貸す《力》がどんなものなのか全然話してないのにそれをほしがるなんてな。
「・・・いいよ、一応仕事だからな」
「貸してやるよ、俺の《力》をさ」
「だけど、一個しかないんでしょ?その《力》って」
仮面の女が聞いてくる。
「その通り、今はほとんど盗まれて貸し出せるのは『フウガ』だけ」
「「フウガ・・・?」」
俺を見ている二人が同時に言う。
「《力》の名前だよ」
「『フウガ』を持つ者は風を意のままに操る事ができるようになる」
「ほぅ・・・」
銀髪の男はかなり興味があるみたいだな。
・・・まぁ、そうでもなきゃ貸せって言わねぇか。
「では、早速貸してもらおうか」
「マリィ、縄を解け」
「はいはい・・・てか自分でやんなさいよ・・・」
俺を縛っていた縄が解かれる。
体が重いな・・・しばらく動いてなかったしな。
「じゃ、始めようか」
指で四角に空を切る。
するとそこに契約書が現れる。
久しぶりの感覚だ。
何年ぶりだろうな・・・。
その契約書を銀髪に手渡す。
「その契約書に書いてあることに同意したら名前と使用目的を書いてくれ」
「あ、ペンはいらねぇよ、指で書きゃいい」
「・・・ふーん、どれ・・・」
銀髪の男・・・確かリィって呼ばれてたっけ?
そいつは契約書に目を通す。
『我は今「フウガ」を契約の元に拝借する者なり』
『我はこの力を契約せし目的より他の悪しき事に使わぬことをここに誓わん』
『我はこの契約を交わすにあたり「時の狭間に葬られし者」と向き合う事も併せて誓わん』
『我が死す時はこの力は「貸し出す者」の手に自ずと還さん』
『我、契約を破りて悪しき道を行かば即ちそれに相応しき裁きを受けん』
『以上の項目に同意しこの力を拝借せん』
「・・・ふむ、なかなか物騒なものではあるな」
リィとやらは全くたじろぐ事なく契約書に名前と使用目的を書いた。
その瞬間、契約書は消え、リィの周りに風が吹き荒れた。
「うわわっ!ちょっと、何なのよ!?」
「契約が完了したんだよ、これでこいつは『フウガ』の力を借りた事になる」
「リィ、使用目的はなんて書いたの?」
「とりあえず、“仕事を円滑に進めるため”と書いた」
「あんまり具体的に書くと、その“悪しき事”になりやすそうだったしな」
仕事を円滑にって抽象的に望めばどこまでが悪しき事なのかの境界が広くなるな・・・。
・・・なかなか賢いな、こいつ。
「・・・でだ」
リィは俺に向き合った。
「何度も言うが、お前は何者だ?」
・・・恐らくそう言いたかったのだろう。
だが・・・
「・・・・・・・ッ!!」
突然、仮面の女――マリィが突然その場で倒れ、その言葉を遮った。
於:???
報告者:???
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・返して・・・・・
・・・・・還して・・・・・
・・・・・私を返して・・・・・
・・・・・私を還して・・・・・
・・・・・私は貴方・・・・・
・・・・・貴方は私・・・・・
・・・・・だけど貴方は私じゃない・・・・・
・・・・・だけど私は貴方じゃない・・・・・
・・・・・私を返して・・・・・
・・・・・私を還して・・・・・
・・・・・返して・・・・・
・・・・・還して・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
於:リィのアジト
報告者:リィ・ベトライ
「おい!しっかりしろマリィ!!」
・・・返事は無い。
ただただうなされている。
・・・一体なんだってんだ?
契約書書いた途端倒れこみやがって・・・
「おい、《貸し物屋》!!」
「な、なんだよ・・・俺は何もしてねぇぞ・・・」
「お前以外に誰が容疑者になりえるんだよ?」
「ホントに何もしてねぇって!!!」
「・・・だったらこれはどういう事だ?契約書に何か仕掛けでもしてあったのか?」
「知るかよ!契約した奴以外の誰かが倒れたんなら契約書は関係ないだろ!?」
「そういう仕掛けかもしれないだろ、『契約時に身近な誰かを犠牲にします』という類だ」
「だから違うって!契約した奴以外に害が及ぶのはその力で誰かを傷つけた時だけだ!」
「じゃあ一体・・・」
ドォン!!!
天井から音が響いた。
「あぁ!?なんだこの訳の分からない時に・・・!!」
「・・・この感じ・・・まさか、“奴ら”か!?」
「“奴ら”?」
「契約書にあったろ?『時の狭間に葬られし者』!!」
「それがなんでここに来るんだよ!?」
そう話している間にもまた轟音が響く
「多分《双牙》を嗅ぎつけてきたんだ・・・」
「あぁ?なんでそいつが?」
「詳しい説明は後だ!とにかく、表に出てこいつらぶっ飛ばすぞ!!」
「あ、おい待て!!」
《貸し物屋》は勢い良く部屋から飛び出て外へ向かった。
「・・・ったく、しょうがねぇな・・・」
「・・・ん?アイツ、この建物の構造知ってんのか?」
「お〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜い!!!どっからどう出れば良いんだ〜〜〜〜〜〜〜〜?」
「・・・ハァ」
「馬鹿かよ、アイツは・・・」
俺も外へと駆け出した。
於:リィのアジト付近
報告者:リィ・ベトライ
バンッ!!
俺と《貸し物屋》は勢いよく扉を開いて外へと飛び出した。
すると、そこにいたのはまさしく異形の者・・・。
真っ黒の体におかしな紋様、所々四肢も欠けている。
人の形はしているが、とてもじゃないが人とは言えないな・・・。
それがざっと・・・100か?
「こいつは俺がやる!いくぞ・・・デュアル、」
《貸し物屋》がそう言いかけたその時、一体が飛び掛ってきた。
二人同時にその場を飛び退く
「うおわっ!」
「・・・クッソ、デュアル・サークルは広範囲なのはいいけど、やっぱ隙がデカ過ぎるか・・・」
・・・使えん奴だ、全く。
さて、どうするかな・・・。
「おい、《貸し物屋》」
「・・・なんだよ?」
また一体が襲い掛かり、俺らは同時に飛び退く
「何なんだ?こいつらは」
「詳しく話すと長くなる」
・・・もう一体。
今度は飛び退くと同時にこっちが攻撃を仕掛け、その一体は斬られて消滅した。
「そうか、なら質問を変えよう」
「こいつらは敵か?」
「う〜ん・・・味方はしてくれねぇな」
「そうか」
言いつつ俺は刀を右腕の鞘から引き抜く。
「何をどうやったらこんなものができるのか、とか」
「何のためにこんなものが在るのか、とか」
「色々聞きたい事はあるが・・・」
左手から右手へと刀を持ち替え、腰の辺りに構える。
「とりあえず・・・」
「あ、おい!ちょっと待」
「お前ら邪魔だよ」
ビッ!!!
《貸し物屋》の制止の声も聞かず、真一文字に刀を振る。
その瞬間、うごめいていた異形の者たちのほとんどが動きを止めた。
再び刀を持ち替え、右手の鞘に戻しつつ・・・
かまいたち
「・・・華舞断」
チリン・・・
刀が鞘に完全に収まって、柄についている鈴が一鳴りすると・・・
ゴォォォォォォ!!!
突風が吹き荒れ、さっき動きを止めた者が風に切り裂かれ塵と化した。